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四国見聞録:クロツバメシジミの島・関前/上 愛媛県今治市 /四国

(毎日新聞 2011/05/03)
http://mainichi.jp/area/kagawa/kenbunroku/news/20110503ddlk39040578000c.html

◇チョウに思いを懸けた 地域起こしの起爆剤
 愛媛県今治市の北西部、広島県との県境の瀬戸内海に浮かぶ3島などからなる関前地区。ここには、羽を開いた際の長さがわずか2、3センチの珍しいチョウ「クロツバメシジミ」がいる。今治市に合併する前の旧関前村では、この小さなチョウに思いを懸けた村起こしの取り組みが続けられてきた。そろそろ今年も新たに誕生した成虫が、活動を始める。4月中旬、チョウを愛する人々と、できればチョウそのものにも会いたいと、関前へ向かった。【津島史人】

 今治港からフェリーに乗り、来島海峡の島々を抜け「しまなみ海道」の巨大な橋脚を見上げて約1時間。船は、3島で最も人口の多い岡村島(3月末で442人)に着いた。

 クロツバメシジミは主に中四国や九州で局地的に生息する。幼虫の時にはツメレンゲなどを食べ、春から秋にかけ、断崖などで生息する。環境省のレッドデータリストでは、準絶滅危惧(きぐ)種に指定されている。

 岡村島で初めて発見されたのは89年。見つけたのは、関前郵便局に勤務していた舩越清忠さん(62)だ。

 舩越さんは昨年4月に9年間務めた郵便局長を辞めた。今は港務所の空きスペースを利用してクロツバメシジミの標本などを展示したギャラリー「ちょうちょ島館」を運営している。同館でコーヒーを飲みながら、舩越さんに話を聞いた。

 「いるかもしれないって聞いて、格好の地域起こしの起爆剤になると。少子高齢化に歯止めがかかるかな、と思って」と、探し出したきっかけを語る。

 海を隔てて約20キロ離れた今治市の今治城。石垣の南側にだけクロツバメシジミが生息していることが、数十年前から知られている。しかし、なぜこの場所だけなのか、専門家の間でも謎だった。

 舩越さんは、知り合いの愛蝶家から、「関前から来たんじゃないか」と言われた。今治城の石垣は、関前から切り出した石灰岩で組んだのではないか。その石灰岩に卵やツメレンゲが付着していたため繁殖したのではないか、というのだ。

 調査を始めた舩越さんは、ツメレンゲの繁殖地を探した。全部で26カ所見つけたが、肝心のチョウはなかなか見つからない。「ある日、妻からツメレンゲがいっぱいある場所があると聞き行くと、2匹が飛んでいた」。捕まえてすぐに村役場に走り、職員らに「おったぞ!」と見せた。

 毎晩のように友人と自宅に集まり、クロツバメシジミを生かした村起こしについて意見を出し合った。併せて、生態とツメレンゲの増やし方を研究。大事に育てたツメレンゲが台風で全滅したこともあったが、95年には村のチョウとしても指定され、古里の象徴として認識されるようになり、テレビや新聞が取材に訪れたという。

 それでも、人口減少を止めるには足りない。周辺市町村と合併した05年1月には800人近くいたが、今年3月末には586人に。

 舩越さんは「それでも、我々は生きていかにゃならん。ここを、少しでも魅力ある場所にするのに、貢献できたらええかな、と思っている」と笑った。

  ◇  ◇

 舩越さんが、関前で唯一の岡村小学校で保護活動を児童に指導すると聞き、同行した。

 「幼虫は、葉が肉厚な草を好みます。中でも好きなのは、ツメレンゲ」「1回の産卵で30個ぐらい産みます」。全校児童7人に、チョウの標本やツメレンゲの鉢植えを並べて説明。その後、子供たちは校庭へ出て、割りばしを手に、ツメレンゲを株分けした。同小は、舩越さんがクロツバメシジミを発見した3年後から、代々保護活動に取り組んでいる。

 6年の菅修也君(11)は「自分たちも、先輩たちから引き継いできたので、活動を途切れさせてはいけない。みんなで大事にしなければ、と思う」。

 取材を終え、引き上げようとすると、「いますよ!」という職員の声が響いた。帰り支度の児童や先生たちが、一斉に校庭の1カ所に集まった。

 いた。黒褐色の羽、オレンジの斑点。確かにクロツバメシジミだ。草の葉に、子供の指にと、ひらひら飛び移っていた。

 入学したばかりの1年、須賀大翔君(7)は「これがみんなが大好きなチョウだな。すごいな」と喜んだ。

 クロツバメシジミに会えた。私自身も初めての遭遇。胸が熱くなった。

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 岡村島(愛媛県今治市)へは、今治港の第3桟橋(今治市片原町1)から市営フェリーで約1時間。広島県呉市とは橋でつながっている。「ちょうちょ島館」は、船を降りてすぐの港務所2階にある。館長の舩越さん手作りのカレーなどが味わえるカフェを併設。今のところ、営業日は土日のみ。舩越さん(090・8972・1428)。
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by parnassus7 | 2011-05-03 20:18 | シジミチョウ科
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